“続いてモラルハザードについて。これは完全な誤解にもとづく批判だ。生活保護の不正受給は著しく少ない。むしろ審査が厳しすぎて、本来なら保護を受けるべき人にケアがいきわたらないという現実がある。北九州市では餓死者が出た。
さらに財政難を理由にした生活保護への批判:まず現在の財政難は不景気のせいではなく、減税しすぎたせいだという点を忘れてはいけない。そのうえで、税を使って生活保護を給付することの妥当性を検証しよう。
犯罪と貧困には強い相関がある。海外旅行に出かけるときは、スラム街には近づかないようにするのが常識だ。日本国内であっても、山谷や西成に立ち入るときはそれなりの緊張感があるはずだ。貧乏人がすべて犯罪者予備軍だと言いたいのではない。しかし貧困は心の余裕を失わせる。極限までカネに困ると、ヒトはわずか5,000円のために殺人を犯す。
生活保護などの社会保障について考えるときは、そういう治安悪化によるリスクと比較しなければならない。社会保障のために徴税されたカネは、治安悪化により失われる財産や命と比較してどちらが重いだろう。幸いにして現在の日本人は、防犯にあまりコストを支払わずに生活できる。しかし社会保障が機能不全を起こせば犯罪率が急上昇し、防犯コストは跳ね上がるはずだ。このリスクをどう評価するかによって、社会保障に許容できる税額は変わる。
なによりも重要なのは「誰から徴税するか」だ。貧困層から貧困層。あるいは中間層から中間層にカネをスライドさせるようなやり方では何の意味もない。
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